夢のようで泡のようで(2019年現場振り返り①)

ミュージカル刀剣乱舞 三百年の子守唄2019

脚本:御笠ノ忠次 演出:茅野イサム 制作:ネルケプランニング
出演:崎山つばさ、荒木宏文、spi、太田基裕、横田龍儀、牧島輝 ほか

まさかこの後の推しを見つけることとなるとは知る由もなく観劇した初演から早2年。早すぎ。初演は見つけたと思ったら終わっちゃったので(というかシンプルにくそよわおたくなので)一度しか観ることができなくて。きちんと面白いものを観るつもりでチケットを取ってきちんと面白いものを観ることができて幸せだったな。物吉貞宗というキャラクターも演技も三百年の子守唄という物語も私はすごく好き。知ってた。映像で初演を何度も見たけど、当たり前だけど目の前で生きている舞台を観ないと見たことにはならないなって。どこの席でもオペラグラスを持ってずっと物吉くんの表情を追ってました。大きな瞳に涙の膜が張る瞬間まで目撃できて満足した。ずっと美しかった。殺陣も歌もダンスも随所で成長を感じたけど、それ以上に初演で一番光ってた、生々しい情動を持って演じるという部分が変わらないのが嬉しかった。
ご本人も言ってましたが、自分発信でやっていたところがすごく楽しかったしちゃんと受け入れてくれるみなさんも心強かった。
あと大倶利伽羅くんとのデュエット曲すげーよかったね。どんうぉーりーに続いてすごく横田くんらしい歌詞だと感じました。2番全カットは意味不明ですが。
のちの雑誌のインタビューで公演中笑うのも辛いほど悲しいことがあったと知って、それでもいつも通り笑顔で舞台に立ってSNSの更新までいつも通りにやってた横田くんは本当にえらい。こんな言い方は絶対間違っているとは思いますが、辛い思いをしても立つ意味と価値のある作品だったように思います。

メサイア トワイライトー黄昏の荒野ー

原作:高殿円 脚本:毛利亘宏 演出:西森英行 制作メサイアプロジェクト
出演:山田ジェームズ武、宮城鉱大、長江崚行、山本一慶、橋本真一 ほか

メサイアシリーズの観劇は初めてでした。先に予習として現世代のDVDをおおかた見せてもらったのですが素直に面白くてびっくりしました。こちらの勝手なイメージで、メサイアシリーズっておたくが好きそうな設定の軽めのブロマンスなのかなと誤解していましたがそんなイメージの5億倍硬派に作られていた。物語の面白さは書き手の研究量と知識量にある程度比例すると思っているんですが、月詠のパンフレットだかに遺伝に関する参考文献がずらっと並んでいたと聞いて納得しました。世界観も物語も作り込まれていて出来がよくて、そりゃ面白いでしょ。観客に頭を使わせる部分はありつつ、決して観客を置いていかない(熱量で持っていくというのか)バランス感覚がすごい。
主演の山田ジェームズ武さんがもうかっこよくてかっこよくて美しくて高貴で圧倒されました。見た目が美しくて演技がうまい。ラストの雪のシーンがあまりにも美しかった。
万夜ちゃん役の長江くん、あのプロ感と同時に実年齢相当の可愛らしさ出してくるからずるい。早熟な子どものキャラ造形に惹かれやすいおたくなので万夜ちゃんのことだいぶ好きでした。なにより彼には彼を幸せにしてくれる人が周りにいるのがいい。
あと一人だけ脚を出していることりちゃんこと昴流くん、完全に私が好きな枠だしパンフの写真色っぽすぎて困った。どうにかして幸せになってほしい。
あとはTLを騒がせていた顔ランメサイアひなこぐの離別……とはいってもこれ書いてるいまは黎明を見たあとなんですが、とりあえず眼鏡を外して髪を下ろした小暮くんがめちゃめちゃビジュアルいいの勘弁してとなった。橋本さんのほかの作品はテニスくらいしか見たことないのですが、どちらかといえばいい子の役が多いのかな?こういう感じも合う。
あと最後に本編とは関係ないこと言いますがザリキングこと村上幸平さんのザリガニの歌、あれやばい。

MANKAI STAGE A3!~AUTUMN&WINTER~

脚本:亀田真二郎 演出:松崎史也 制作:ネルケプランニング
出演:水江建太荒牧慶彦 ほか

七尾太一くんのことも赤澤くんのことも完全にノーマークだったんですが、そこがもうめちゃめちゃ良くて泣くつもりなかったのに泣いちゃった。なんだろうな、七尾太一くんの「特別な人間になりたい」って願いって多くの観客も身に覚えのある願いなんだと思う。だから泣き崩れる太一くんを見るのは本当に辛くて、それを包み込む臣くんの優しさに涙が止まらなくなった。稲垣成弥さんすごく良かったな。歌も記憶よりずっとよくなってた気がする。そこそこ長身のみなさんに囲まれてるはずなのにその中でもとんでもなく脚が長い。見てください世界これが青7の男ですよ。
万里役の水江くん、エーステで見つかってこっから爆速で売れていくんだろうなあという感じがすごかったです。ルービックキューブ動画の時点で思ったけどほんとよく見つけてきたな。
あとは十座くんの時間経過の演出が印象的でした。冒頭、十座は舞台一階から二階にいる舞台衣装の椋を見上げる、物語進んで臣くんが一階から二階にいる稽古着姿の十座を見上げる、そしてラスト、私服の椋と舞台衣装の十座が同じ位置で話す。最後の帽子をかぶせてあげるところ問答無用で笑顔になっちゃうよね。
冬組は原作ストからして急にファンタジーな要素が出てくるんですけど、そこを歌にしちゃうことであまり客に色々考えさせずに進めるのがうまい。誉さんがめちゃめちゃいい子かつ頭良くて好きでした。モブ女子として出てきたれおくんがすごいイイ女で強くてサイコーでした。
身内での好感度がめちゃめちゃ高い伊崎くん、実力を買われてのキャスティングだなと思ったんですが顔もいい。ゴッド座の劇中劇までやったのはびっくりしました。顔出してるキャスト彼ひとりなのにゴッド座としての説得力のあるものを作るってハードル鬼高いはずなんですがきちんと挑んでやり切ってたのすごい。
誰と一緒に見に行っても楽しい舞台ってすごいなと思います。エーステというシリーズがこれからどういう歩みをするのかすごくすごく楽しみです。

2.5次元ダンスライブ『ツキウタ。』ステージ 第8幕『TSUKINO EMPIRE -Unleash your mind.-』

脚本:ふじわら 演出:野元準也 制作:ムービック
出演:校條拳太朗、松田岳、竹中凌平、上仁樹、輝山立、横尾瑠尉、TAKA、土井一海、鷲尾修斗、秋葉友佑、佐藤友咲、三山凌輝 ほか

ツキステのおたくにお誘いいただきました。今公演でキャストの卒業があるだろうということで最後を惜しむ身内の横で私はわりとシンプルに楽しんでました。終演後の飲みで現キャストの思い出などもたくさん聞けてそれも楽しかった。
校條くんとTAKA様に黒と白のロイヤルな衣装着させてる時点で100点。どんなきらびやかな衣装を着ても俳優の顔がぜんぜん負けない。すそを引きずる丈の衣装着てるときのTAKA様、顔地面から遠すぎて衣装の下で浮いてないとおかしいレベル。そんなTAKA様の衣装のすそを持って追いかけるたいへん顔のかっこいいスパダリ土井さんも100点満点でした。短髪でこんなにかっこいいのずるい。軍服のビジュアルがみなさんとんでもなく良かった。並んで立つと壮観でした。軍服のりっかちゃんさん、とてもウテナで美しかった。
連れてきてくれた子に脚本が虚無と脅されていましたがまあそこまでではなかったです。普通に先が気になる展開は作れていたし広げた風呂敷は大方畳めてたと思う。キャラクター同士の慕い慕われる、愛し愛される関係性がシンプルに良かった。キャラもキャストもみんなすごい生き生きとしていて、キャラのこともキャストのこともあまりきちんと知らずに行ったなりに何となくどちらのことも把握できたような気がします。ろまたんぶりの磯野大さんと栗田さんもね、めちゃくちゃ面白かった。あ~きのっ♪
ライブパート超楽しかった~!見ていて良かったジェムクラブに出ていた松田岳さんのダンスがしなやかで好みでした。ラストのツキノウタめちゃめちゃ楽しかったな。客席、コール完璧でいい空間だった。見よう見まねでしたがお名前呼べて楽しかった。
ファンサタイムは2回見に行って2回とも連れがファンサ被弾しててすごかった。ファンサする気ある人が3人しかいないみほとせに慣れてると手厚さに感動したというかどうせ客席降りするならこれくらいちゃんとしないとやる意味なくない……?と唐突に自現場に虚無るなどしてしまった。
ツキステシリーズはキャストの自由度が高いのが楽しそうでいいなと思いました。MCのわちゃっとしたところ普通に俳優さんの名前出たもんね。原作オタクが口うるさくないのいいね~とお友達に言ったところ「その手のオタクはすでに淘汰された」らしいですが、それでも毎度キャパ広げて続けられてるのが答えだよね。進行役だった鷲尾さん輝山さんはじめ、キャストに頭の回転が早い人が多いんだろうな。だから自由にさせてもちゃんとバランスを保ててる。
これは舞台を降りてもそう感じるけどキャストのみなさん自分の武器をしっかりわかってる人が多い。自分の武器もファンが求めてることもよく分かってるし、それをやっていやらしさというか媚びてる感じが全然ないのがまじですごい。自分が楽しくてやってますって感じでおたくの嬉しいことしてくれる感じ。
土井さんがツキステでも相変わらず天然全開で勝手に嬉しくなってたんですが、いつのまにか土井ジュニアなる方(TAKA様)まで爆誕しててにこにこした。マグロのくだりわけわかんなすぎてめちゃめちゃ好きでした。天然が生き生きできるカンパニーはいいカンパニーだよ。あと三山くんの小顔で手足長くてダンスうまくて笑顔が人なっつっこくてぐいぐい来る感じが最強の子供って感じで強かった。
ところでツキステ先輩はどの2.5より先にステラボールを使ったのに、一回きりでステラを捨ててアンフィでやれてるのほんと羨ましいんですけど?!?!ていうかステラでやってた紅縁だってちゃんと端の端までステージ作ってくれてたし……紅縁最端だったけどぜんぜん海外じゃなかったもん……ネルケもマベもいつまでもオタクがステラを許してくれると思わないでほしい。

MANKAI STAGE A3! SPRING&SUMMER キャスト雑感

エーステ春夏、感想・舞台を見てキャラについて思ったこと・俳優さんについて思ったことなど。もうすぐ2020年になりますが、春単独でも夏単独でもなく春夏公演の感想です。


夏組

三好一成/赤澤燈さん

とにかく場を持ってく力がすごい。あのハイテンションと小ネタの面白さで全部持ってく。圧倒的に明るいオーラでどんな相手にも臆さない感じが良い。舞台をガツガツ動かしてる感じ。
三好登場シーンの勢いがどんどんすごくなってて楽しかったです。凱旋公演になると真澄を袖に追いやったり綴を引き倒したりしててこの三好本当に強い……!って思ったし、そういう部分があるから弱さを見せたときのギャップがいいんですよね。
舞台で見て改めて、三好は他人に怒ったり言い返したりできない弱さのある人なんだなって思った。ずっとどんな相手にも恐れずハイテンションで絡んできた三好が、天馬の一言には「えっと……」しか返せない。真澄に面と向かってうざいって言われても楽しく振る舞い続けたのに。喜怒哀楽のオーディションも、怒だけ面白い感じになってるのは三好に怒るという引き出しがないからかなと思った。他人に怒れないって、嫌われたくないからとか深く相手と向き合ってないからとかそもそも悪いのは自分だと思ってるからだとか、要因は色々あると思うんですけど、なんかそういうところがごくリアルな人間なんですよね。それまでの三好の振る舞いからするとあそこであの反応は意外に見えるけど、普通の人だったら天馬みたいな人に真っ向からあんなこと言われてすぐには言い返せないのは普通だよね。
改めて天馬に手を握って、友達だし、と言うところ、両手で天馬の手を握るためにずっと持ってたスマホをいったん置くのがいいですよね。スマホ持ったまま手を取るわけにはいかないので自然な仕草なんだけど目に止まるとはっとする。
円陣のシーンはほんとに良いですよね。演者もリアルに天馬の(陳内さんの)鼓動を手のひらで感じてる、すごいリアルさを感じられるシーン。こんな円陣を思いつくことのできる三好一成さんの明るさが本当に好き。
ダンスが楽しそうで好きです。特に劇中劇のダンスは三角と動きが対照的で良い。ダンスうまい二人が違う感じの動きをしてるからダンスをあまりしていないキャストも浮かない気がする。エースリーで必要とされるダンスは揃ってるとかそういうのではないと思うし。
すでに死ぬほど言われてると思うけど、ともるさんのやってた「回転する夜」のノボル役を三好くんにもやってほしい。絶対合う。

 

斑鳩三角/本田礼生さん
れおくんに三角がハマり役なのは何なら見る前から分かってたけど、それにしても期待以上でした。身体能力の高さ、ハイトーンの声、青系カラーに愛されているお顔立ち、最適解のキャスティング。
あの話し方も感情が滲んでいて幸せそうで聞いてて心地よい。彼がいるとぱっと場が明るくなってシリアスなシーンもドン底にならない。劇中で三角自身が言われている場を締める役割ですよね。見る前は三角くんのド変人な感じが舞台でどうなるかと思っていたけど普通に受け入れられた。三角星人であることに一切手は抜いていないんだけど、それがいい感じに場を和ませてる。仲間が落ち込んでるようなときにすぐ寄っていって彼なりに元気づけようとする感じが優しくて可愛い。常に全員の味方でいる感じが妖精っぽくていい。それがあるから夏組が喧嘩してても見てて本当に辛くはならないというか。あと曲中で天馬に変人!って言われたときの「え~?」って不服そうな顔がなんか可愛くて好き。自覚ないんかい。
キャストサイズのインタビューで「三角くんはファンタジーなキャラクターだからこそ自然体で演じることを心がけた」というようなことを言っていて本田さんは本当に……すごいなあ!(語彙ゼロ)
円陣のシーン、天馬の胸を叩く力の強さが、力加減を知らない子どもみたいにも見えるし天馬への信頼の表れにも見える。天馬と三角くんのあいだの演劇初心者でない人同士の信頼感というか相棒感みたいなものがあるように見えてすごく良いな~と思った。
で、めちゃくちゃ褒めたいのは演技スイッチが入ったときの演技の貫禄。私れおくんのことをテニスとジェムとチャックアップを少ししか知らなかったんですけどあんなすごい人だったんですね?!あの艶のある低音の声と通常三角の声のギャップすごい。歌も安定してるし、更にそこから悪い王様役の演じ分けもすごい。あと監督との面談のところでじいちゃんの声になるところがほとんど間を開けずにふたつの声を出してるのがすごいんですよね。ただ低い声じゃなくて温かみがあって芯のある声なのが良すぎて。本田礼生さんのいいところを生かせすぎている。
魔人役が本当にとにかく華やかで目を惹かれる。表情も動きも人らしくない美しさ。ダンスもアクロバットも動きがすごいだけじゃなくてなんか上品。魔人の衣装は首の後ろ側がすっきりしてるので長い後ろ髪がひらひら揺れるのが色っぽい。れおくん、ひょろっとしたイケメン兄ちゃんに見せかけて色気出すのが得意すぎるんですよね。(観ていて良かったジェムクラブ)(desireの圧倒的イイ女感)あと千秋楽のソロパートのアレンジ「♪おじいちゃん、演劇は……面白いっ!」ここ本当に良すぎて見終わったあともずっと頭に残ってた。
あとどっかの公演で後アナ盛大にとちってたのが本編が完璧なだけにめちゃくちゃ可愛かったです。
あとこれは普通にれおくんの話ですが、この方しっかりしてるのに褒められるとすごい素直に照れるのがとんでもなく可愛いですよね。物怖じしないけど謙虚でだいたいのトークは彼に任せておけばなんとかなる安心感がある。


向坂椋/野口準さん
椋くんはちょっとでもあざとさが見えると可愛さが別物になってしまう気がするので、むしろ可愛こぶるほうが苦手そうな子がきてくれてよかった。あのおどおどした感じを見ていても全くいらいらしないのは演技にまっすぐさというかシンプルさがあるからかなって思います。椋くんはもちろんだけどむしろシンドバッドとか劇中劇のキャラがより生きそうな俳優さんだなって思う。
落ち着いた優しい感じの声が良いですよね。素朴だけど美しい響きを持った声。お顔が本当にまだ子どもって感じでかわいい。10代の成長途中の男の子の頬の丸さは尊い。キャラ的に同い年の幸さんは丸みの少ないすでに完成された感じの顔立ちをしているので、そのあたり好対照で良いなって思います。(まあ俳優さんでいえば年齢差はけっこうあるんだけど。)エーステがどれくらいのスパンで公演を続けていくのかは分からないんですが、原作の椋くんの成長に合わせて役者さんの見た目も大人っぽくなっていきそうで楽しみです。
幸さんが椋くんの前で泣いてしまうシーンはまず原作からして本当に素晴らしいんですけど舞台でもやっぱり良い。幸さんに肩を貸してただ優しく声をかけるその画にシンプルに待って椋くん王子様じゃん……!ってなったんですよね。スカートを履いてる幸さんに対して普通にかっこいいと言ってるのが、見た目じゃなくて本質を見て評価できる子なんだなって、そういう椋くんのスピリットがすでに王子様じゃない?天馬くんのことだってオーディションの時点で椋くんに対してきつく当たってたのに、それでもその人を経験を鑑みてリーダーに指名できるの実はすごくない?ビジュアル的に王子らしい雰囲気の人がごろごろいるカンパニー内で、幼くて可愛らしい椋くんがきれいな心で王子様に憧れていることが美しいなと。あとゲームは無音でやることが多いので改めて「むく」という名前の響きがすごい。

劇中劇がほんとに生き生きしてて楽しそう。それに本当に客席をよく見てる。まじで目が合う。この若さでこんなに客席に目を向けられるのすごい。
あと急にDVDのバクステの話をしますが、最初のビジュアル撮影のときド緊張しててなんなら七五三の写真撮影かな?くらいになってたのに(かわいい)、東京凱旋のときにはもうみんなに構って構われてにこにこしてるのが本当にかわいいし嬉しくなっちゃった。野口くん自体普通にしっかりしてる子だとは言われてるし椋の印象よりはずっと大人なんだろうけど、でもやっぱ普通に最年少のかわいいとこぜんぜん出ちゃってるからね。すくすく育ってほしい。

 

瑠璃川幸/宮崎湧さん
幸さんは三次元化されたことによってどういう子なのかきちんと理解できた気がする。お顔立ちは女の子っぽいというよりはしゅっとした美形。宮崎くんのお顔のポテンシャルならメイクの次第でもっときゅるんとした顔にもできると思うんですが、幸さんのメイクは他のキャストとほとんど変わらないですよね。(まつげしっかり上げてるのなんかは椋くんもそうだし。)ズボンを履けば綺麗な男の子に見えるし(エンディング衣装はそう)、スカートを履いてる姿はお人形さんみたいで可愛い。ただ自分が可愛いと思う服を着てるだけなんだと思った。勿論可愛い服に見合う自分であることは強く意識してると思うけど。このジェンダー観がさすが21世紀生まれのキャラクターですよね。いつだったかファッショニスタ若手俳優がメンズ服はパターンが少ないから色んな女の子が羨ましいみたいに嘆いてるのを思い出したりした。
東京公演のどこかで幸さんが担当した前アナが素晴らしかった。「みんな可愛い服着てきた?……これコールアンドレスポンスだから。みんな、可愛い服着てきた?」(客席拍手)「俺も負けないくらい可愛い服で行くからね」美しくて強くて高嶺の花みたいな幸さんに不思議と親しみみたいなものを感じた。幸さんは常人離れして美しいし強いけど、かわいいものを見たい作りたいっていう、客席にいる私たちの多くも普通に持っているときめきで動いている人なんですよね。
舞台の幸さんは原作よりも不器用で一本気な印象が強い。というのも天馬の俺様に対して原作だと呆れたように言ってた台詞を怒鳴るように言っているところが多くて、それが三好や椋くんみたいな、他人に怒ったり言い返したりできない人のぶん怒鳴ってあげてるように見える。そしてそんな強くてかっこいい幸さんだからこそちょっとイタズラ好きな感じがまたいいんですよね。勝ち気な笑顔がとんでもなくかわいい。
声が感情に揺れやすい感じが特に劇中劇でよく生きてると思います。ベテランの天馬に対して初心者の幸さんが気持ちで釣り合おうとしてるように見える演技。気の強さと対照的に、眉を下げた切なげな表情が可憐で可愛い。
宮崎くん自身が話してるところを少し聞いた印象だと、言葉を知ってるし頭のいい人なんだと思います。それでも本人はあくまで謙虚に必死にとやってるバランス感がすごく良い。宮崎くんを推してるお友達が湧くんはダンスが苦手で~ということを気にしていたんですが、そこは愛しさポイントだと思う。

 

皇天馬/陳内将さん
天馬は演技で周りを圧倒しないといけない役だから、きっと他のキャストよりキャリアのある人が来るんだろうなとは思っていて、だから陳内さんが選ばれたのは驚いたけど納得したんですよね。ビジュアルは相変わらず美しいしちゃんと演技で圧倒できる人。けどそれ以上に陳内さん自身が本当に天馬であろうとしているように見えてそれに一番びっくりしました。今日は特に感極まっちゃったのかな、ってくらいの泣き方を毎公演してて。2.5出身の俳優でもキャリアを積んだら2.5は卒業してほしい的な風潮も大きいなか、銀劇より大きい舞台にだって映像にだって出てる人なのに、A3という作品に本当に入れ込んでくれていることが嬉しかった。東京京都の各公演のカーテンコールでも、天馬の言葉にも陳内さんの言葉にもどちらにも取れるような内容を一貫して(それでいて内容を変えて)話していて。A3という作品が舞台化される意味を色々と考えてやってるんだろうと感じました……と、長々と書きましたが別にわたし陳内さんについてそんなに詳しいわけではないので普通にどんな舞台でもそういう感じなのかもしれない。
稽古がうまく行かず咲也に相談するところ、みんなで協力したほうが~という流れで「それぞれがベストを尽くすのが一番大事だろ」こういう台詞が出るところがA3の良いところ。ただのわがままじゃなくて、ずっとそういう環境でやってきた天馬にとっての当たり前なんだとわかる。またそう考えるとまず三好くんに対して「誰にでもいい顔して~」と言ってしまうのも、子どもの頃からずっと学校行事や友達よりも仕事を優先してきた天馬くんだからこそ(そしてそのキャリアを誇っているからこそ)、稽古場で友達がどうこう言われたのに怒ってしまったんだろうなと。本当にここの流れ、まず原作があまりにも天才すぎる。
合宿曲もキャッチーでありながらきちんと段階を踏んでいて好きです。舞台2階から下に降りた子たちに指摘をしながら「なんでなんだ、リーダーってなんだ」から咲也の台詞を思い出し、階段を降りてみんなと同じ高さに立つ、ダメ出しだけでなく良いところも伝える、夏組のメンバーが天馬を見直してからの「なんでなんだ、この気持ちはなんだ」、夏組全員が加わって「少しずつだけど何かを感じてる、仲間という絆」。このときの天馬くんの表情がまだすこし戸惑った感じなのが良い。
これは夏組全体の話ですが、キャリアに差があってもみんな芝居のラインが同じ?というか……劇中劇は別なんですけど、普段の劇団員のお芝居のとき、変な貫禄を出してる人がいない?というかちゃんと同じ世界観で生きているというか。うまく言えないんですが。それがすごくいい。
あと陳内さんは舞台の外でもファンが求めてることが分かりすぎなくらい分かる人だと思うんですけど、そういうファンサービスをするときにさりげなさゼロなのが逆になんか愛嬌だなと思う。

 

🌸春組🌸

・シトロン/古谷大和さん
まず求められることではあるけど、あの癖の強すぎる喋り方を完全にものにしてたことが普通にめちゃくちゃすごい。劇中で雄三さんがシトロンに「外国人が日本語の台詞を頑張って言ってると思った時点で客はさめる」ということを言っているけど、これはシトロンを演じるキャストにもそっくり同じことが言える。日本人が頑張って外国人のふりしてるって思わせちゃったらだめなんですよね。これを劇中で言われることのハードルの高さやばいと思うんですがそこらへんあまりにも完璧すぎた。劇中劇中と対支配人の受け答え以外、アドリブ含めほんと一秒もシトロン語がブレなかった。
春組はあまり小ネタをぶっこめる子がいないので安定して盛り上げられる人がシトロンで良かった。盗み聞きは〇〇の刑とか雨降って地固まるとか、ほぼ毎回違うこと言ってるしちゃんと毎回受けてるのすごい。雨降って地固まるシリーズはアメフット五郎丸がナンバーワンで好きでした。あと三好登場のシーンの何か新しいこと~はUSAを踊りだしたやつが一番沸きました。
めちゃくちゃ面白いし春組の飛び道具だけど母性的な優しさがにじみ出てる。シトロンって子どもみたいに無邪気だけど、みんなどこか未熟な春組のなかで根が一番大人というか、原作2部まで読むと本当に色々経験してる人だし、達観したような部分があるんですよね。至が辞めると言い出すシーンでシトロンが至を庇うようなことを言うのも、シトロンはこの5人がずっと一緒にいられると本当に信じてはいなかったからかなって。
結果的にかもしれないけど、春組のキャスティングは特にまず本人の性格がキャラっぽいこと(テニミュ式に言うと本人がキャラクターの種を持ってること)を重視されてるように感じるんですが、シトロンも大和さん本人が持つ大人っぽさや見守り力がめちゃくちゃ滲み出てて良かった。「これからたくさん知っていくね、お互いに」優しすぎて好き……。
春組メンバーの素を知れば知るほど精神的に大人な人がまじで大和さんしかいなくて
あと色んなインタビューで「舞台が」好きだと言ってくれるのが舞台のおたくとしてめちゃめちゃ嬉しい。
あと男の顔の好みがまったく合わないお友達と、大和さんの顔が好きって合意できたのすごかった。好みを超越する顔の良さ。なんの奇跡でこのEラインが自然と生まれるんだ。


茅ヶ崎至/立石俊樹
ちゃんと推してる人とは違う印象だとは思いますが、私から見た立石くんは本物の天上人なイメージなので、外面の至さんは完璧だろうけど素の至さんをどう演じるんだろうってあまり想像つかなかったんですよね。
そこのあたり、前半の公演と凱旋公演でかなり印象が変わったなと思います。東京公演までは「殺すぞ雑魚(響きが美しい)!!!」って感じでそれはそれで好きだったんですけど、凱旋公演でそういう台詞がすごいしっかり響くようになった気がします。(突然別作品の話をしますが、私は立石くんが全国立海のS1の幸村くんをどう演じるのか全然想像できなかったんですが、この凱旋公演を見てそれも俄然楽しみになりました。)喋り方にオタクっぽさが出るようになって、至さんというキャラのそういうギャップの面白さが伝わりやすくなったかなと思います。
CDジャーナルのソロインタビューで立石くんが至さんについて話してる内容が良かった。私は原作1部のストーリー読んだときに至さんってけっこうどうしようもない人だと思っていたんですよね。至さんが辞めると告げるシーン、「こういう咲也との温度差もあるしさ」この台詞本当に大人げなさすぎるしひどすぎる(台詞として効果的すぎて原作がド天才でもある)。からの「辞めてもみんなのこと応援してるから」本当にずるい。
でも舞台を見てそのへんも印象が変わりました。ひとり不純な動機で劇団に入ってしまった至さんが一度辞めるという決断をすることがすごく自然な流れに見えた。その記事で立石くんが言っていたことは、至は社会人で物事に対する責任というものを分かっている、このときの態度は春組のみんなへの思いやり、みたいなことでした。それがすごく腑に落ちたんですよね。(CDジャーナルのインタビューは他の話題も全文引用したいくらい素晴らしいので読んでください。私推しが載ってない雑誌すごい久々に買ったよ)
家族エチュードの内容が普通にすごいんですよね。実際酒癖悪くてギャンブル癖があるような父親なんて別れたほうがいいはずじゃないですか。でも!それでも!お父さんと一緒にいたいっていうのが本当に理屈じゃなくて良くて。
至さんはなんだかんだ一生懸命な春組メンバーにとって自分はいらないしいなくても大丈夫って思ってたかもしれないけど、そうじゃないんですよね。だってたとえそれがどんな人間だって家族は家族だから。特に咲也は、どんな人でも家族がほしかったから。
雄三に胸ぐら掴まれて怒鳴られてるときの反応がすごいいかにもゆとり世代の人っぽくてなんか好きです。至さんはめちゃくちゃ美しい容姿で生まれておきながらこういうときの反応が普通の人間なのがいいですよね。真澄とかそういうところの反応は新人類だし。
ディボルトの歌い方がすごく好き。「気安く話しかけるな、殺されたいなら話は別だが」この辺カ行の吐き捨てるような歌い方が好き、かっこいい~!
客席降り、何度か近くに来てくれたけど、すごい外面の茅ヶ崎さんという感じのおたくを寄せ付けない微笑みであまりにも高嶺の花で最高でした。カーテンコールで片手を胸に当てた貴公子な礼をしてるのが素敵でした。

 

・皆木綴/前川優希
顔小さくて脚が長くて、スタイルの平均値がおかしい舞台上にいても更に目を引くほど常人離れしたスタイルの良さ、なのに顔立ちがあどけないのが可愛い。あざとさのない、リアルな頑張ってる男の子の可愛さがあって、なんか回を重ねるごとに目が離せなくなる子。はにかんだ感じの笑顔がすごい可愛いんですよね。
皆木綴ってキャラ自体、色んなテイストの面白い脚本を生み続けるド天才でありながら本人は自分が普通の人間だと全く疑わないのが面白いですよね。原作を読んでたとき、綴みたいな子が脚本家なことに何となく違和感があって、だって脚本家ってだいたい変人じゃないですか。変人故に社会に迎合できない人たちの強いフラストレーションによって創作物が生まれるみたいなとこあるじゃないですか。でも綴はそういうタイプじゃないんですよね。OPの歌詞でも言ってるけど彼の綴る言葉は夢なんですよ、素敵なものを作りたいって思いで創作してるのあまりにも眩しい~!!!!し、そういうタイプの作家って一番天才だと思う。
「大好きな家族」って普通に言えちゃうのもいい子すぎてびっくりする。ムカついたりイライラしたりっていうのを普通に見せる子なのに、根が光属性すぎる。
ゲーム内の皆木綴くんの劇団員ブログが特別なことを書いてるわけじゃないのに好感度500%って感じですごく好きなんですが、前川くんのSNSもまさにそんな感じ。年上ばかりの春組キャストのことを可愛いって言うのもそうだし、「家族写真」とか「大好き」とか衒いなく言える感じがまんま綴だなと。
ツッコミは回を重ねるほどに生き生きとしてきてるように感じる。シトロンの雨降って地固まるシリーズ、突っ込みも日替わりでバリエーション変えてきてるのが良い。前川くんもがしっかりすればするほど大和さんがやりやすくなる感じが見てて楽しかったな。
客席降りでニコニコ嬉しそうにあっちこっち見ながら手を振ってて可愛かった。ちゃんとボックス席も見てくれてる。ボックス席のほうが高いから柵のあいだからすげー笑顔で顔覗かせてきててすごい可愛かったんだよね。近くを通るとマイクを通さない歌声がめっちゃ聞こえてきて大きい声で歌ってくれてるのこっちがにこにこしちゃう。


・碓氷真澄/牧島輝さん
真澄くんも舞台を見てまた印象が変わりました。原作はとにかくずっとブレない頑ななイメージが強かったけど、舞台だと感情が揺れる・戸惑うような部分が印象的でした。まずOPソロパートの歌詞が良いですよね。「♪ひとりにずっと慣れてきたから戸惑う毎日」ってさあ戸惑ってたんだ?!きみ戸惑ってたんだね?!かわいいな?!
春組のみなさんはやたらとスキンシップ激しいんだけど、触られてる真澄くんの感じがなんか好きでした。雄三さんのタメが長いところ、咲也に肘を掴まれてその肘を居心地悪そうに上げたときがあって、ついに振り払うのかなって思ったけど振り払わずそのままだったのが可愛かった。咲也との殺陣稽古のあと監督とのあいだに割って入られたときのちょっと焦ったような「お前じゃない」、可愛い。
原作だと相当やべーやつだけど、舞台で見るとすごいまとも。どこをフォーカスするかで印象ってこんなに変わるんだな。稽古中の指摘も別に間違えたことはなにも言ってない。むしろ真澄いなかったら春組やばかったのでは……?良い舞台のためにってところをこの時点でちゃんと考えられてる。春組のストーリーは、春組の公演を成功させるための物語とメンバーが居場所を見つけるための物語が同時に動いてて、そのふたつの軸が徐々に重なっていってる。真澄はずっと舞台を成功させるために動いてるけど、それがいつの間にか共演者のために、に重なっていく。
だから至さんが辞めるって言い出したとき、すぐにエチュードに参加するし、咲也の殺陣を教えてあげられる。ふたりの殺陣稽古のシーンの神聖さが本当にすごくて……。劇伴、きれいな音楽なんですけど、途中で鈴の音が加わるのが神事じみていてすごく良い。神様は鈴の音を聞いて降りてくる。
殺陣稽古や劇中劇で咲也くんと交わす視線の熱さが本当にめちゃくちゃ良い。咲也と真澄って劇団に入らなければきっと関わることのなかった人たちで性格も正反対で、でも演劇を通せば障壁なんて全くないところで繋がって分かり合ってる。(横田くんと牧島くんもそういうところはある気がする。)
横田くんと声の相性がめちゃくちゃいい。歌安定してるし、邪魔しない優しい声。
回を重ねるごとに監督へのアピールが増えてて、それが受けてるし可愛いのが良い。(あとこれは誰かの地雷かもしれないので薄めの文字で書きますが、A3という作品がこれから続いていってもゲームの性質上彼が監督と結ばれることは恐らく公式ではないんだよな、ということに気がついてから俄然好きになってしまった。振られ属性の美少年が大好きなので……。)


佐久間咲也/横田龍儀さん
冒頭の「空っぽだった劇場が~」の独白からもう大好きだった。6月28日の初日、前アナでまずいきなりトチるしそれはもうすごい緊張が伝わってくる声で、でも冒頭のこの台詞はそういう緊張のまま横田くん自身の感情で言っていい台詞だと思う。咲也のときの横田くんは薄い身体からびりびり溢れるような情動がいつもすごかった。
原作ゲームをやってたときから、A3が舞台化されたら佐久間咲也役は横田くんがいいなって思ってたんです。横田くんは色んな媒体で自分と咲也との共通点は演技が未熟なところだと答えていて、そんな直球で言う?!って驚くんだけど(だいたい演技の上手い下手って歌やダンスと比べても評価のあやふやなものだし)、そういう部分が似ているって本人が思うなら演じることは苦しくもあったんじゃないかなと。東京楽の涙が印象的でした。エーステの稽古が始まってからずっと前向きな言葉ばかりを聞いていたから、ここで初めて聞いた「怖くて」という言葉に、なんかびっくりしたけど腑に落ちた。苦しいと感じながら、苦しい道を逃げずに進んでいくところが横田くんの靭さだと思ってる。
咲也の演じ方について稽古前に受けたインタビューでは、咲也と自分は似ているからこそ咲也としての全力をコントロールしたいというようなことを言っていたのですが、公演が始まったあとは「横田龍儀が全力でやれば咲也っぽくなる」というふうに変化していた。エーステはたぶん、キャラであり俳優でもあるような瞬間を意図的に作ってると思うんですけど、横田くんに関してはたぶんそのあたり無自覚でやってて、それが作品自体のみずみずしさになってると思う。(無自覚でというか、ガムシャラにやってたらおのずとそこに行き着いたというか……)本当にただのファン視点だけど、この咲也を見てると横田くんがみほとせ初演の東京楽のあとに上げたブログだったり、歩き旅で旅先で出会った人に俳優として有名になりますって誓ったことだったり、そういう横田くん本人の歩みを思い出して、ほんとこういう役に出会えたことがまず奇跡みたいだなって。
「頑張るって職業はねえ/ここはプロが客を楽しませる場だ」に対する「頑張るって職業はないけど、オレ、お客さんに楽しんでもらえるように頑張ります」とか、咲也の台詞だけど横田くんの決意に聞こえる。そしてこの世の多くの若手俳優の気持ちでもあってほしい。
はい。
原作スト読んでるときはあんなにいい子でかわいい咲也くんが親戚の家で上手くやれなかったことが不思議だったけど、舞台を見るとなんとなくそのへん腑に落ちた。いい子だからこそ、違う家族とうまくいかない感じがわかったというか。咲也くんはいい子すぎて暗さやずるさが全くないから逆にとっつきにくいし、元気そうだから放っといてもいいやって思われる部分はありそう。そしていい子だからこそ、自分が異邦人だと分かっている場所で無理に居場所を求めることはしなさそうだなとも。底抜けにいい子だからこその寄る辺なさがある。咲也くんの求心力って、泉みたいにこんこんと湧き出るパワーというよりも引力なんですよね。(なに言ってんのか自分でもよく分からない……)そしてそういう部分が腑に落ちたからこそ咲也にとってロミオ/春組という居場所は絶対に手放せないものだったんだと分かる。
(というか横田くん見てると実際苦しみや悲しみは見た目や人間性の美しさを選ばず降りかかってくるものなんだなって思う。人は顔が良ければけっこうなんでも許しちゃうけど神様はそうじゃないし、神様にしかどうにもできないことっていくらでもある)
あと三好登場のところで三好のシトロンへの主演?からやりあって?後ろで主演!オレです!ってアピールしてるけどスルーされてる咲也くんが、親戚の家でもこんな感じだったのかなあって思ってしまう、別にそういうシーンでもないですが。
茅ヶ崎さんを引き止めるエチュード。ここほんと全部好き。なんでこんなに目がまんまるで大きいんだろう。宝石みたいな御子だな本当。取り残された子どもの切実さが不思議ときらきらを放っていた。キャンプも天体観測も、咲也自身が生きていたころのお父さんとした約束だったのかも。ここのシーンはさんざん笑かしたあとすぐに真剣な空気に持っていけるのが本当にすごい。横田くん、瞳の引力で緊張感を作るのがめちゃくちゃ上手で……。
監督との面談。静かに過去のことを語っていたのに、子どものころに見た演劇の話になると夢中な口ぶりになるのがかわいくて、それから海賊役の台詞を言うところ、少し下を向いてすっとこちらを見た表情が凛々しくてかっこよくて……!!泣き笑いでの「居場所がほしかったんです」推しのこんなお芝居を見ることのできたおたくめちゃくちゃ幸せだ。
ロミオよかったね。綴くんの脚本てあらすじ自体はわりと定番だと思うけど実際舞台で観たときの幸せがすごい。花束奪って投げるとこの全力投球いつも好きだったな。ターンしたときに汗が照明に反射しながらぱっと散るのが本当に綺麗でした。「見つけた俺達の居場所」と歌いながら舞台上に倒れこんでいくのが好きすぎるんですよね。咲也の抱える孤独へのはっきりとした答えで、同時に最期まで舞台で生きていくという覚悟のようで。仮死薬を飲んで背中に倒れこんでくるジュリアスを見上げる表情が美しい。ここはもう本当に、説明できなくてただただ良い。それからお互い背中を預けあって幸せそうな表情をするのも。
あとはこまごました可愛かったところを書き連ねます。手と足同時に出てるぞ!のところでたまに普通に手と足逆に出そうになるがあって本物の不器用を感じてめちゃくちゃかわいかった。あと凱旋の2幕頭でペン回しをしようとしてボールペン落として客席がうふふ……という空気に包まれて始まった回があって好きすぎた。ペン回しができないのすごく横田くんっぽいし咲也すぎる。あとラストらへん「すっっっっっっっっっ……っごく」って溜めるところが凱旋から地味に遊んできてた。途中でちょっと寝ちゃって至さんに起こされるやつが可愛さも面白さもナンバーワンでした。
最後に薄めの文字で関係ない話をしますが、横田くん自身も高校生のときに故郷から離れる経験をしているんですよね。横田くんは福島の発電所の近くの村の出身で、高校生のときに東日本大震災に被災して避難しないといけなくて、友達に別れも言えずに知らない土地に転校したという。昔のブログとか歩き旅とかでもよくしてる話なんですが。いきなり知らない街に行くことになって毎日不安で生活も大変で。でも横田くんが俳優になるきっかけをくれたのは避難先で出会った、いま俳優をしている同級生だったんですよね。咲也くんも、もしもご両親が生きていたらこれほど演劇に惹かれることはなかったかもしれない。そういう巡りあわせに思いを馳せてしまいますね………。(締めが雑)

 

☀️大人組☀️

支配人/田口涼
彼はあざとくても駄目だし本当にいらいらさせちゃっても駄目っていう塩梅の難しい役だったと思うんですけど、そのあたり本当にドンピシャのラインでした。舞台だと監督の台詞を代わりに言うところも多くて、それをだらしないキャラの支配人が言うって本当に難しいと思うんですけど、それも違和感なくてすごかった。下手に熱くなりすぎると支配人っぽくなくなってしまうし、でも役者としてついつい欲しがっちゃう気持ちがでてもおかしくないはずなのに、彼は最初から最後までずっと最適解の支配人でした。支配人のダメダメなところが舞台だといい感じに笑いに変わってて良かった。
あと劇中劇でロザライン役として出てるところ、ずっと背中が曲がったおばあちゃんみたいな歩き方だったのが地味にめちゃくちゃ気になってたんですよ。でも千秋楽ではちゃんと背筋伸ばしたイイ女になってて、そういう演出だったのか~!って納得した。だってこれでリアルにアンケート書いた人がいたとしたら、劇中劇にアンケート反映されたごっこできたじゃん!書いとけばよかった~!エーステめちゃくちゃ楽しいな!天才!と思いました。

 

古市左京/藤田玲
藤田さん、なんかあのかっこよすぎて逆に見てるこっちが微妙にこっ恥ずかしいみたいな感じが異様に似合いますよね。春夏キャストのなかでいい意味で浮いてた。
客席をめちゃくちゃ見てる。監督に話しかけるところってだいたい真ん中あたりの列を見ている気がするのでそれより前列に座るとだいたいキャストの目線が頭上を通り過ぎる感じになるんですよね。でも藤田玲さんってたまに前列の客をめっちゃ舐め回すように見てる時間があるんですよ。ただ見つめ合うという謎の時間が生まれる。顔が、いいな……。香水のにおいがすごくて近くを通った日には品川くらいまで残り香に包まれる。
あとなんかSNSでのキャラなりきり的なものが過ぎてたまにリプライがやや事故ってるのがなんか、2.5の現象として面白く見てる。なんでこんなやたらサービス精神があるんだ。

 

迫田ケン/田内
出ている時間が短いわりにカロリー消費量ほかキャストとほぼ変わらないのでは?迷いなしの全力が気持ちよかった。本人の謙虚で素朴な感じがいい感じににじみ出てて愛されキャラになってたなと。
大人キャストのなかでしっかり可愛がられていて、よかったねえとなります。

 

鹿島雄三/滝口幸広さん
滝口さん、しゃべってるところはよく見ますがお芝居を見るのはテニミュぶりかもしれない……!大石くんのときとは声の響きから何もかもうまくなってて、元々下手だと思ったこともなかったのにそれでももう全然レベルが違ってた。そりゃあテニスに出てたのだって10年以上前だけど、10年以上俳優を続けてたらこんなに違うんだって。こういう駆け出しの頃の姿を客によく知られている人を雄三役にキャスティングすることにすごく意味があったと思う。
脚長くてスタイル良いのがいかにも舞台俳優って感じで良い。キャスト発表されたときは雄三にしては顔が綺麗すぎると思ったけど、これくらいかっこいい人のほうが元春組に説得力があっていいですね。夏組のみなさんといるときに夏組で一番背の高い天馬よりもさらに背が高いのが良い。身体の厚みがしっかりあるから、体格差で天馬含め夏組メンバーがちゃんと子どもに見える。
300回も席立とうと思うような芝居を止めずに最後まで観てちゃんとアドバイスしてくれるってほんと死ぬほどいい人ですよね。つまんない舞台観るのってまじできついもんね。

 

ということでエーステ春夏公演、褒めるとこしかなかった!これから続いていくであろうハイクオリティの舞台シリーズの一作目をきちんと目撃できたこと、そしてそのセンターに大好きな俳優が立っていて、一体となって生きていること。おたくとして贅沢すぎました。出会えてよかったし出会えてくれてよかった!!!です!!!!読んでくれた方ありがとうございました。