VOYZBOYというアイドルのこと②

何かと「メンバーと曲だけは良かった」って言われるグループだったので、曲のほうのことも書きました。作詞作曲を全部書いておきたかったんだけど初期の曲は分かりませんでした……分かる人もしいたら教えてください。

僕等の世界

https://youtu.be/fq_wiJ4CzUw
作詞:curry_tokyo、金丸佳史 作曲:南田健吾
(収録:アルバム「ARRIVAL OF VOYZ BOY」、シングル「僕等の世界/NEVER GIVE UP」)
物語があって物語の登場人物がいて歌う人によって印象が変わって聞くたびに特別だった。きらきら鳴るピアノの音が印象的。VOYZBOYの中では似た系統がない無二の曲。個人的にこの系統の曲がもっとあったら嬉しかったな。大人数アイドルの強みが生かせてた。
オリメン秋嶋くんのパートを子どもパート、渡邉くんのパートを大人パートと個人的に呼んでいます。「君のいない世界などただの闇 星が瞬いてもただの闇」狭窄で美しい『僕等の世界』に強いまなざしで「キミ」を引き込んでいく「僕」、「憂鬱な風がまた吹いては切り裂いていく」一度離されてしまう「キミ」。オリメンではなかったものの石橋くんがこの曲を歌うところを何回か聞けて嬉しかった。いちばん思い出深かったのはzepp羽田で福井くんと歌ってたのでものでこれは本当にもう一回見たかったな。このグループのなかでは数少ない、関係値をおたくが認識している二人で歌っていたのがまずよかった。お人形さんみたいな造形ながら表情に苛烈さがある石橋くんと、目にかかる長い前髪の隙間から瞳を覗かせる福井くんの対比。石橋くんは置いて行くほうも行かれるほうも、苛烈さも儚さも得意なところが好き。「涙乾く優しい春も 胸を焦がす眩しい夏も 心ふたつ色づく秋も 愛の温度感じる冬も」過ぎていく季節を掴まえていくような歌詞が好きだった。(二人セゾン感すごいけど二人セゾン好きなので……。)石橋くん自身も季節の移り変わりに対する感性を持っている人だから、より特別に聞こえました。
VOYZBOYの楽曲のいいところはずっと世界観が少年のままのものが多いところだと思っています。大人にならなきゃ、みたいなこと言わない。(もちろん大人になることは正しいことではある。)少年の物語をいろいろ思い浮かべてみると、カムパネルラもタッジオも黎二もビリーも「僕」を置いて行ってしまうけど、この曲の「キミ」は「僕等の世界」に戻ってくる。大向こうの人たちもいなくなって最後「僕」一人だけになったステージに「キミ」だけが帰ってくる。たぶんこの曲で描かれている愛は世界に広がって伝播していくようなものではないけどそういう歌だからこのグループに合っていたし好きだった。『——な人間どうしでは、互いに二人きりの共通の孤独を求める。共通の孤独の廻りに秘密の壁を作る。この壁のあるなしでabnormalかどうかがきまるんだ。彼らは当然自分等をやましく思う、そして自ら好んで隔離されている。彼等は壁の外側の、健全な社会に出ていこうとはしないんだからね。』*1

Forever Young

作詞:DAISUKE 作曲:Ryuja、DAISUKE
(収録:シングル「Spark」)
この曲も少年のままの世界観がとても好きだし、それをVOYZBOYというアイドルの視点で歌っているところがいい。「まだ大人になんてなれない ここは僕たちのネバーランド」全てのおたくは銀河鉄道ギムナジウムネバーランドがだいすきなので例に漏れず好きでした。「空が明るくなり出してもだれも帰ろうとはしないよ」「僕らまぶしい朝迎えよう」朝が来ても夢が覚めない。ライブはいつか終わるし次の日の朝にはわたしたちは憂鬱な通勤電車に乗らないといけないけど、この曲の歌詞にそんな現実はない。2番の「たまに熱くなり~それが日常」までの歌詞、良くも悪くもこのグループってこんな感じだったんだろうなあってなんか納得する。
「何年経っても特別な場所」のパートを歌う桜井くんの歌声が本当に美しくて彼のためにある歌詞みたいに聞こえてた。

La La La Love you

「何してるの?何があったの?」聞いている人への問いかけから始まる曲。アンコールで歌われることが多かったけど、ライブから帰ったあとのそれぞれの生活に彼らの何か思いを持ち帰れるような歌詞だった。「笑顔の連鎖 同じ記憶を刻もう」「いつか君が下を向いて涙を流すとき この歌を口ずさんですぐに飛んでいくよ」彼らがどうして歌う職業を選んだのかを伝えてくれるメンバーは少なかったけど、この曲の歌詞はそれに答えてくれるみたいで好きでした。
ファンのための曲の究極はアイドルからファンへのメッセージであると同時にファンからアイドルへの気持ちを歌う曲にもなると思っています。そしてこの曲に関していうと、アイドルだった彼らがアイドルじゃなくなった彼らに歌う曲でもあったと思う。ぼいずから退所したメンバーも50人以上いて、彼らにとってアイドルをしていたことがいい思い出ってばかりじゃなかったんだろうなと思わされることも増えたけど、たまに思い出せるような歌であればいいな。そういう情緒が育つグループだったのかどうかおたくには分からないけど。

H2O

https://youtu.be/ejILqRqwbEU
作詞・作曲:ケンモチヒデフミ水曜日のカンパネラ
(収録:シングル「H2O」)
立川来てくれた子にぼいずぼーい解散しますって報告したら「世に残ったのはH2Oのみ」って返ってきたのは笑いました。解散後も2.5ファンの方に「〇〇くんにもH2O踊ってほしい」って言われてるとこをちょいちょい見かける。先輩俳優のみなさんとのH2O動画、それぞれ個性あってよかったよね。振付が簡単そうに見えて意外と慣れるまで難しい、blooming smileよりもMANKAI開花宣言のほうが難しい現象。
何かしらのトンチキコンテンツを通ったことのあるおたくには絶対刺さる曲だった。プロモツアーとか学祭とか他所のステージで歌うことも多かったけど、この曲でとにかく盛り上げて知らない人にも足を止めてもらおうって意気込みを感じられて好きでした。
そしてこの曲のいちばんいいところは歌詞に嘘や誤魔化しがないところだと思っています。やっぱり水はうまい、間違いないので。何か文章を書くとき、実感や真実に近いままの言葉を書くことは難しくてどうしても嘘やきれいごとじみたものになってしまうけど、水がうまいってシンプルに真実なところがいい。水ってところも人とか体調とかを選ばなくていいと思う。よく聞く『元気ないときは美味しいもの食べてあったかくして寝て』みたいなフレーズ、それができるなら最初から元気だろと思うけど、水だったら具合悪くても飲めることが多いし。H2Oのプロモツアー、毎回夏の屋外や半屋外に何時間も並ばされて体力残り2くらいでミニライブを見てたので、カルビうめえとか豚骨ラーメンうめえとかじゃなくて本当に良かったです。
MVも見どころ多くて楽しくて青春ぽくていいですよね。桜井くん伝説の顎飲み大好きすぎる、大天才。みんなめちゃめちゃ暑そうにしてるわりにベストとかブレザーとか着込んでるのがしゃらくさくてとてもいい。何より石橋くんのビジュが終始最高だった。推しメンの美しさを大切に扱われていてとても嬉しい。私の印象だとインスタ広告でよく見かけるなあというタイミングで再生数が一気に伸びてた気がします。メンバーもグループも全く知らなくてもつい続きを見たくなるのは分かる。あのときに関連動画で流せるMVメイキングとか出せてたら少しは違ったのかなってちょっと思う。
豊洲でイエローがやってたのもわりと好きだったんだけど一部イエローのメンバーにとっては黒歴史に近いものだったらしくて笑うしかなかった。一応同じグループだったはずだけどまじでやりたいことバラバラだったんだなって。ゆにふぁいは結成から3ヶ月弱経ってもやりたい音楽の話とかぜんぜん聞かないのでまあ逆に喧嘩しないのかなという感じはする、知らんけど。全く関係ないけどぼいずやゆにふぁいを見てると中学生のとき自分たちなりに頑張った合唱コンを見に来た母にクオリティの面でこき下ろされたことを思い出します。)

あの日見た空

作詞・作曲:みゆはん
(収録:アルバム「ARRIVAL OF VOYZ BOY」)
わたしの知る限りではVOYZ唯一のユニット曲。何がいいってユニット曲なところがいい。例外もあったけど、だいたい歌声選抜って感じのメンバーで歌うことが多い曲で人選に意味があったのも良かったです。こういう○○選抜的な個性あるユニット曲がもっとほしかったな。(余談だけどアンプリはそういう意味でキャラを考えて選曲したデュエット曲が多かったのがすごくよかった。)
品川インターシティの卒業公演で英くん・立澤くん・稲葉くんの初期からいてくれた卒業メンバーの3人で歌っていたのはさすがに泣いてしまった。長年グループにいて歌うということに思い入れを感じさせてくれていた3人。卒業していく3人と歌詞の情景がぴったり合っていた。微妙にベタな甘ったるさがある歌詞だけど、同時にどうしようもなく終わった過去の出来事を歌っているんですよね。ぼいずぼーいのみなさんは自分たちで曲を作っているわけじゃないから楽曲を自分自身の物語にどう引き寄せるかってすごく大事だと思うんだけど、そういう意味で卒業公演のこの曲はすごく良かった。この時に聞いていなかったらここまで印象に残る曲ではなかったかも。卒業も解散も納得いくかたちだったかと言われると何とも言えないけど、この卒業公演だけは美しいかたちにしようと頑張ってくれたと思います。

PARTY TIME

個人的にPINKの定期公演といえばこの曲。定期公演楽しかったなあって懐古するときにまず思い出す。確かピンクの最初の定期で初めて聞いたんですよね。フォーメーションで曲がかかる前からパーティータイムだ!ってなるのが好き。かっこよく決めてるなかにピンクらしいエンタメ感もあってサービス精神にあふれていて本当に好きだった。
ラップパート担当の石橋くんが本当にかっこよくて石橋くんのこと少しでも知ってる人全員に見てほしかった。だって石橋くんが衣装のシャツ捲るってすごくないですか?(?)あまりラップの良し悪しのわかる人間ではないけど石橋くんのラップってとてもかっこいいと思う。わたしはガチで石橋くんの歌を下手だって一度も思ったことがない感じの耳をしているんですが、ちゃんと歌詞をはっきり歌ってくれる滑舌の良さがあるのすごく大きい気がする。メンバーがひとり欠席になった回でその子のパートも引き継いで一生終わらないラップになってた回本当に最高だった。というかこの日は新幹線の遅延で場当たりもほぼできなかった回で、アドレナリンで乗りきった感があって本当に楽しかったし思い出深い。

ギリギリLOVE

https://youtu.be/gLtJC4Lz8eM
曲名通り(?)ぼいずのおたくのReal Faceでした。日常での汎用性が高かった。遅刻しそうなときメンバーが危うい発言をしたとき自分の情緒がおしまいに近いときのテーマソング。意図してたかは分からないけど日常で何かと思い出す曲はいいよね。
ギャップを見せようという采配なのかもしれないけど、台詞と担当メンバーがことごとく合ってなくておもしろかった。「本当はやっぱり僕なんかより 笑顔が上手なあいつのほうが」いつもぴかぴか笑顔の伊月くんがこのパートで珍しい表情をするの良かった。稲葉くん「何も言えないままの自分ほんとは一番……大嫌い(世紀のまじでかっこよすぎるキメ顔)」そんなわけないだろすぎて好き。稲葉くん、鼻でバズったことがあるからか決め顔のバリエーションに横顔があるのがいいよね。ところでこのパートを石橋くんが担当してた回もあったんだけどこっちは連番してもらった子の感想がなんか良かったです。
動画貼ってるLINE CUBE SHIBUYAのやつを一生お友だちと見てました。顔が美しすぎる高橋奎仁さんがまじでずっとカメラを見ていて本当にすごいので……。動画なのにこんなに目が離せなくなることってあるんだ。何十人っていても目に飛び込んでくる。彼が最後にステージに立つ姿を見るためだけに舞浜まで行ってよかったなと思います。一言もしゃべんなかったけど。

Kiss You

なにも映像に残ってないから幻だったような気すらしてきてるんだけど、ピンク定期の稲葉くんが担当した振付が本当にかわいかった。特にサビはアイコニックな手元の振りが多くてTikTokで見たくなるような感じで好きでした。別に誰もこの曲Tiktokで踊ってなかったけど。(そもそもTiktokの音源にこの曲ないんですよね。)卒業後のインライで稲葉くんがアイドルとTikTokについてわりとしっかり分析していたのでもしかしたら意識して振付していたのかも。稲葉くん、かっこいい系の曲だけじゃなくてかわいい曲も振付できるの有能だなって思ってました。曲中メンバー同士絡んでわちゃわちゃしてるのもかわいかった。
歌詞も曲もアイドルど真ん中。サビの歌詞が「見慣れた街角 見上げた三日月」と視線を遠くに動かしてからの「君が笑った」と目の前にあるものにシンプルに結ぶのがベタだけど良い。伊月くんが確かセンターだったと思うんですが(全ての記憶があやふや)こういう歌詞に説得力を持たせるのがすごく上手な子だと思います。日頃なんというかおじ感(?)を全く見せない子だからこそキラキラまっすぐな歌詞が白々しくならない。
ずっとかわいくてめろめろりんだったけど「絶対解けない謎かけみたいに 答えはないの」って歌詞だけは聞くたびにじわじわきてた、解けないなら謎かけではない。知恵の輪とかじゃだめだったんかな。(I・N・Mにすな)

夏の花束

作詞:curry_tokyo、松原さらり 作曲:南田健吾
(収録:アルバム「ARRIVAL OF VOYZ BOY」)
石橋くんが完全な天使として振る舞う曲なので本当に大好き。Bメロの石橋くんパート、彼の持ち味だと思っている歌声の透明感が活きてて大好きだった。歌詞と歌声がぴったり合ってる。きらきらした顔の人がきらきらした表情できらきらした目で「キラキラ」って歌詞を歌うの、すごい奇跡みたいに思っていた。
この曲でセンターの石沢くんがとても良かった。石沢くん、とても美しい顔立ちながら表情が絶妙に素っぽい感じがとても沼だなと他担ながら感じるんですが、そういう良さが存分に出る歌詞。夏の空、坂道、改札、そういう身近な景色を切り取った歌詞によく似合う。大切な人に花束を贈るとき、たいていの男の子は自信満々に渡すんじゃなくてちょっとはにかんだ顔をして渡すと思うんだけど、石沢くんの笑った顔ってそういう類のちょっとはにかんだ感じがあるのが可愛いと思う。

PRETTY SPIDER

https://youtu.be/ECEzLJp0nr4
作詞・作曲:首藤義勝KEYTALK
(収録:アルバム「ARRIVAL OF VOYZ BOY」)
ピンクらしさが全開の楽しいトンチキアイドル曲。賑やかななかに色っぽさもあって本当に見ていて楽しい曲。サビの振りがペンライト持ったままなんとなく振りコピできる感じだったのも楽しかった。2チーム制になってから最初のライブでエナメル素材のトンチキ新衣装のお披露目がこの曲のPINK ver.だったの最高だった。あの衣装にこのイントロで最初の歌詞が「忍びの掟 姿いと麗し」なの世界観が強い。やりたいことが明確な曲だったのが良かった。2番の暘大コールからの石橋くんパートの緩急の感じすごく好きだったな。そこから2番のBメロ、石橋くん→桜井くんと続く歌割りが甘いかわいい歌声×2で最高になる。
キュートさとセクシーさどっちもあって終始何言ってるのかよく分からない歌詞もすごくいい。普通のラブソングには「僕(I)」と「君(you)」が登場するものだけど、この曲には「僕ら」しか出てこない、境界線の曖昧さ。「真っ暗闇に迷い込んだら」「神様許して」「蜘蛛の糸に気をつけて」一種の罪の意識みたいなものが可愛い毒っけ的に効いてる。おたくに対してやや天邪鬼っぽさがある石橋くんにすごく合ってるし、桜井くんみたいな純真さのかたまりみたいな子が歌っているのも罪深さが倍でとても良い。
僕等の世界もそうだけどこのグループは何か正しいことを説くよりもちょっと間違ってるくらいのラブソングが似合っていたと思う。

*1:福永武彦 「草の花」新潮文庫 p.204